論文:ヒト膵臓癌細胞における Antroquinonol® による癌細胞オートファジーの作動及び癌細胞プログラム細胞死の誘導

(Journal of Nutritional Biochemistry 23 (2012) 900–907)
Chia-Chun Yua, Po-Cheng Chianga, Pin-Hsuan Lua, Mao-Tien Kuob, Wu-Che Wenb, Peini Chenc,Jih-Hwa Guha, ,
a. School of Pharmacy, National Taiwan University, Taipei 100, Taiwan
b. Golden Biotechnology Corporation, Taipei, Taiwan
c. Department of Radiology, Taipei Veterans General Hospital, Taipei, Taiwan

要旨
膵臓癌とは悪性膵臓腫瘍の一種である。90%以上の膵臓癌は、K-ras遺伝子に突然変異及び活性が生じる。膵臓癌の治療方法を見つけることは、現在最も喫緊の課題となっている。Antroquinonol® はベニクスノキタケから抽出したものであり、膵臓癌PANC-1及びASPC-1細胞の増殖を抑制し、その細胞濃度を低下させる。プロピジウムイオダイド染色したDNAを自動細胞解析分離装置で解析したところ、 Antroquinonol® は細胞周期のG1期の停滞とその後のアポトーシスを誘導することが判明した。 Antroquinonol® は、セリン(473)のリン酸化部位において、Aktのリン酸化を阻害する。これは、Aktのキナーゼ活性にとって重要である。さらに、セリンのリン酸化部位(2448)において哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)のリン酸化を阻害する。mTORの活性はこのアミノアシル部分に依存している。また、Antroquinonol® は、mTOR/p70S6K/4E-BP1シグナルの伝達経路における若干数のシグナルのルートに影響を与える。このほか、 Antroquinonol® は、複数種類の細胞周期制御因子とミトコンドリアの抗アポトーシスタンパク質の低下を誘導する。これと相反して、K-rasとそのリン酸化の発現は顕著に増加する。免疫沈降法の実験結果から、そのK-ras遺伝子とBcl-xLの顕著な増強は明らかであり、これはアポトーシスを表している。 Antroquinonol® は癌細胞のアポトーシスを誘導して、癌細胞のオートファジー性細胞死と癌細胞の老化を加速させる。ここでは、上方制御したp21(WAF1/CIP1)とK-ras遺伝子間のクロストークを表している。データから、 Antroquinonol® はPI3K/ Akt / mTORのシグナル経路を阻害することによって、膵臓癌細胞の活性を阻害すると結論づけた。阻害が細胞周期G1期の停滞を惹起し、最終的にはミトコンドリアの依存性細胞死を引き起こす。また、癌細胞のオートファジー性細胞死と癌細胞の老化加速も、 Antroquinonol® が抗癌作用を有することを示唆している。