論文:Antroquinonol® の癌細胞における転移酵素の活性阻害を介したRASシグナル伝達の遮断

(Cancer Chemotherapy and Pharmacology)

要旨
目的:Antroquinonol® とは、ベニクスノキタケから分離させたユビキノン様低分子であり、悪性腫瘍に対して 体外及び体内において広域スペクトル活性を有する。本研究では、 Antroquinonol® の癌細胞を死滅に誘導する分子機序を評価することを目的とする。 方法:ヒト肺癌(A549及びH838)、肝臓癌(Hep3B及びHepG2)並びに白血病(K562及びTHP1)細胞株に対する Antroquinonol® の細胞毒性作用について論証する。 Antroquinonol® は、Ras処理及びウェスタンブロッティング及び特異的抗体によって検出されたERKがリン酸化した癌細胞に作用する。ゲル内蛍光法による解析は、イソペンテニルRasの水準を決定することを目的とする。 Antroquinonol® とファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)間の相互作用は、分子ドッキングのアルゴリズムによって予測するものである。Beclin-1の発現水準、LC3の脂質化及びpuncta形成は、 Antroquinonol® が誘導したオートファジー作用を明らかにするために用いる。 結果: Antroquinonol® が異なる癌細胞株に対して細胞死を誘導する際のIC50値は2.22から6.42μMである。 Antroquinonol® は、H838細胞株において用量依存性(P < 0.01)を呈する加工処理されていないRASの割合を顕著に向上させる。このような増強は、ファルネシル二リン酸(FPP)により惹起されたものである。また私たちは、 Antroquinonol® がFtase活性を阻害することを証明した。分子ドッキングを用いて、 Antroquinonol® のイソプレンユニット及び4-ヒドロキシ基が、 Antroquinonol® とファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)間の相互作用において果たす可能性のある役割を解析、予測した。また、 Antroquinonol® はH838細胞内において、Beclin-1(3-fold)の発現水準、LC3II /I(P < 0.01)及びPC3 puncta形成を増加させた。 結論: Antroquinonol® による癌細胞アポトーシスの誘導は、Ftase活性の阻害と細胞オートファジーの誘導によるものだと思われる。